昔日本代表のサッカー選手がファンから非難を浴びた。 プレー中にガムを噛んでいたことに 「不真面目だ」「真剣さを感じない」 という声があがったのだ。その時の弁明は「 緊張感を和らげ、リラックスしてよいプレイをするためにガムを噛んでいた」 といものだった。試合中の見た目が真面目に見えるかどうか 外見的な印象は別として、選手のとった方法は、 行動心理学的に見れば理にかなったものだといえる。 口にものを入れる行為は緊張を和らげる効果があるのである。 ガムを噛むことは、心理的な効果から言えば、 赤ちゃんの指しゃぶりと同じこと、 その名残なのである。 指しゃぶりは単に空腹感を解消するために行われているのではなく、 指をしゃぶることによって、ある種の安心感を得るという 心理効果をもたらす。それは 母親のおっぱいを吸っている安心感と同じものだ。 指をしゃぶることは、おっぱいを含んで母乳を飲み食欲を 満足させることばかりではなく、 愛情溢れる母親の腕に抱かれる時の心地よさまでも感じさせる 擬似的な行為なのである。 ガムを噛むことはその代償行為として、選手の言葉通り「 緊張を和らげリラックスする」効果をもたらす。 指しゃぶりの代わりにガムを噛むのである。 ストレスがあると無性にものを食べたくなる人が居る。 男性よりも女性に特に多いように見受けられる。 恋愛における失恋などが過食症のきっかけになることもある。 こういう人は空腹を満たすために食べるのではなく、 口に物を入れて、口の中で転がすことが心地よく、 満足感を得るのである。形を変えた指しゃぶりなのである。 何か口寂しく物足りなさ、イライラ、間の持てなさは 裏返して言えば、口に何かを含んだりくわえることで解消している マイナスの心理なのである。