少年時代を振り返ってみると男の子は好きな女の子をついいじめてしまう 男心がある。「いじめというのは、女の子に対して目立ちたいから、 つまり形を変えた求愛行動である」という話もあるが、人間の生理や心理という 面から見ると良く理解できる。昔の少年時代を思い出すと、好きな女の子の ことを考えたり、その女の子の前に出ると胸がドキドキと高鳴ったはずである。 ところが、攻撃的感情を持っている時も胸はドキドキとして興奮する。少年の男心にとっては 、胸のドキドキが恋愛感情なのか、攻撃感情なのか、見分けにくいのである。 これは「情動二要因論」と言われるもので、情動が生じるためには、 「生理的に興奮している」 「その興奮の理由が自分なりにわかっている」 の二つの条件が必要になると言う考え方が 元になっている。しかし、人間というのは、興奮の理由を勘違いしやすい。
例えば、大人になっても、人は少なからず自分の生理的な興奮の理由がわからないことがある。 それを証明したのが、ダットンとアロンという心理学者による有名な吊り橋実験である。 実験場所になった吊り橋は高さ70メートルと、大部分の人は 渡っている時恐怖を感じてドキドキするようなレベルの橋である。 実験はこの橋を渡ろうとやってきた18歳から35歳までの男性を被験者に行われた。 まず、これらの男性に美人のサクラが声をかけ、 彼女の研究に協力してくれるように頼む。このとき、約半数の男性には橋を渡っている途中に この申し込みを行い、残りの半数には、まだ橋を渡っていないか、あるいは 渡り終えて10分以上経過してから、このアプローチを行った。 こうして、美人のサクラは、男性の年齢など一般的な質問をし、 さらに一枚の絵を見せてその絵の状況について作り話をしてもらった。 それが終わると、「今は時間が無いため、この研究についてご説明できないのですが、 関心がおありでしたら後日電話で連絡してください」と言って電話番号のメモを渡した。 以上が実験の概要だが、はたして結果はどうだったか。 まず、質問の後に見せた一枚の絵だが、これは被験者がどんな作り話をしたかで、 どの程度、性的に興奮しているかがわかるようになっている。 それを点数化すると、吊り橋を渡っている途中に声をかけられた男性の方が性的に興奮していることが わかる。また、後日、この美人のサクラに電話をしてきた男性の割合も、吊り橋で 声をかけた男性の方が多い。つまり、吊り橋で美人のサクラに声をかけられた男性は、 胸がドキドキしている理由を吊り橋が高いからというより、 声をかけた女性が美人だからと錯覚してしまったのだ。 こうしたことは運動の後にも起こることがわかっている。 運動をすれば胸の動悸は高まるが、その後に男性が好きそうな女性モデルがいる雑誌を見せると、 普段よりも興奮することがわかっている。 ローマの格言に、「美女に惚れさせるなら、拳闘を見せよ」 というのがあるが、女心にはドキドキと胸が高鳴る男の刺激が欠かせない、 女心をつかむためには、この格言に一理あることが、現代の科学によって証明されたというわけだ。 モテる男女はスポーツマンが多いのもモテる理由の一つとして挙げられるだろう。 これと同じ理屈で、攻撃的感情と恋愛感情は心理的に区別しにくいわけである。 なお、性的興奮に関するホルモンはテストステロンと呼ばれているが、 このテストステロンは攻撃性も高めることがわかっている。 これも、恋愛感情と攻撃的感情が心理的に区別しにくくなることに一役買っているようにも思われる。 好きな異性にモテたいのなら、相手をドキドキさせるようなびっくりするような しぐさや態度をとってみたりすると効果的かもしれない。驚きも一種のドキドキであり、 モテる恋愛心理テクニックとして親密度を高めるきっかけになるだろう。