ある心理実験がある。 被験者に二本のまったく同じボールペンを差し出し、どちらでも好きな方をプレゼントするという。 ただし、「こっちは、もう残りが少ないんだけど」と片方には付け加える。 さて、どっちのボールペンの方が人気があったかというと、お察しの通り が少ない方のボールペンであった。まったく同じものであるにも関わらず、 人は「残りが少ない」と言われただけで、何やら価値があるように思ってしまったというわけだ。 これは心理学用語で「希少性の効果」 と言われるものだが、セールスやビジネスの世界ではこの心理を利用した商法が多い。 例えば「先着何名様」とか「限定何個」など、その商品が限られた人にしか 手に入らないと広告することで、「買わないと損」という気にさせるというもの。 もちろん、消費者がそう思うのは、数が限られていることで、その商品の価値が 上がったかのように錯覚するからである。
前置きが長くなったが、親に結婚を反対されると、逆に恋愛は燃え上がるカップルが
多いというのも、基本的にはこうした心理と同様である。
天邪鬼といえば、天邪鬼だが、人間は、何かを禁止されるとやりたくなる心理の性質がある。
禁止されていることをあえて実行することに大きな価値があるように思ってしまうのだ。
これも「禁止」という制約が「希少性」を生むからである。
親に反対された結婚相手は、手に入りにくいボールペンと同じで、
息子のほうは何とか相手を手に入れようとする。これを心理学では
「ロミオとジュリエット効果」と言っているが、これが
反面非常に危険な恋のメカニズムでもあることは事実だろう。「ロミオとジュリエット」というと、
純愛をつらぬいた若い二人の悲劇というわけで、二人を美化しがちだが、
その「純愛」の純度が、親に反対されることで、過度に高められていたとするなら、そうそう
純粋だとは言ってられなくなる。
現実的には、人生の先輩であり、それこそ純粋に子供の幸せを考えている親の意見の
方が正しい場合もあるわけで、反対されたからと言って意地になってしまっては、結婚相手を
実際以上に魅力的に感じてしまう可能性もあるというもの。「親=不純」「
その不純な親の意見に反対する=純粋」というのは、ちょっと短絡的思考である。
とはいえ、最近は親に反対されると、あっさり結婚を諦める、聞き分けのいいカップルが
多いと言うから、これは老婆心かもしれない。
モテる男女は恋愛で相手を嫉妬させるという心理テクニックを使う。
沢山の異性と付き合っていると周囲アピールすることで、
「早くしないと売り切れて無くなってしまうよ」と自己主張する。
これは小悪魔的なモテるテクニックで、草食系のシャイボーイや内気な女性には
効果は薄いが、好きな人が肉食系で、積極的に異性を獲得しようとするタイプの場合、
嫉妬心から妙にアプローチしてくるようになる可能性もある。
友達の好きな人を奪いたくなるような人って案外いる。
それも希少性で、友達と付き合われる前に、自分が告白して付き合っちゃおうという
人間の恋愛心理がもたらす感情なのである。